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雨がしずかに降る日には

うつ病の経験を生かす

【うつ病の経験を生かす】

 うつという体験は、本人にとってつらく苦しいものですし、まわりの人たちも心を痛めます。
 ただ、人の一生は楽しいことばかりではなく、何かつらい思いもしなければならないところがあります。それならば、つらい経験も今後も生かしていくように考えたほうがいいのだろうと思います。実際に、うつの経験を通して学べることがたくさんあります。

 そのひとつは、自分自身について幅の広い見方ができるようになるところです。強いところも、弱いところも、よくわかるようになります。ふだん私たちは、自分の弱いところから目をそらしていることが多いですし、持ち味や長所にも意外と気付かずにいます。しかし、どちらについてもバランスよく見ることができるようになります。

 まわりの人を見る目も違ってきます。なにもつまずきを知らない人は、どうしても人に対する思いやりが不足しがちです。うつというつらい思いをした経験が、他の人に対する気配りややさしさを豊かにします。同じ人間のなかでも、いろんな気持ちや感情が育ったり静まったりしているんだということを、素直に見ていくことができます。

 ものごとや人間関係に対する見方も、柔軟になります。自分がいま直面している問題を具体化して、解決策を探したり、別の見方を試みたり、相手をきちんと認めたり、少々困ったことがあってもあわてずに取り組んだりということが、自然な形でできるようになります。

 手を出さずにじっと見守る、機会がくるのをゆっくり待つという息の長いものの見方が育ちます。相手を信じ、自分を信じて、あせらずに少しずつ前に進んでいくというスタイルも身につきます。 なかでも、人間の弱いところや困ったところもやわらかく受け入れながら、先を急がずに、良いところを見つけて認めていくという姿勢は、行き方や人間関係をとても豊かにしてくれます。


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